オリッサ州の内陸の町サンバルプルを歩くと、絣のサリーをまとう女性の姿を良く見かける。特にコールと呼ばれる少数民族の姿は、粋である。艶やかな大柄もあれば、重厚で落ち着いた感じのものもある。サンバルプルの絣の独特な品の良さは、このコール族の美的センスが大きく影響しているのではないだろうか。
庶民の生活の中に今直生きている、伝統染織の根深さを思い知らされる。インドの絣の歴史は古く、5~6世紀頃に造られたであろうと言われているアジャンタ石窟の壁画の中には、絣ではないかと思われる腰巻を見ることができる。現在インドの絣で有名な産地は、グジャラート州のパタンとオリッサ州のサンバルプルがある。パタンの絣は絹の緻密な縦横がすりで、“パトラ”と呼ばれる。オリッサ州の絣は、主に木綿の横がすりで(縦横もある)、“コトキ”と呼ばれている。こちらは、大柄で大胆な庶民もの的な図柄から、緻密でデリケートな高級品まで様々だ。緻密なものは品が良く、インドの綿サリーとしてはベンガルのジャムダニとならんで、最高級と言えるだろう。