
ある町に七人兄弟の商人がいました。そしてその兄弟には、末に可愛い妹が一人いました。
ある日、七人兄弟は遠い国へ商いの旅に出かけました。七人は神や魔物の住む国まで行って、そこで七人の美しい女に出会い、それぞれみんな結婚して家に帰ってきました。ところが、この嫁たちというのが、じつはみんな性悪の魔物だったのです。
家に来ると、嫁たちはみんなして末の妹を邪魔者扱いし、つらく当たりました。兄たちは見るに見かねて、妹を遠くの村に嫁にやることにしました。妹は泣く泣く嫁いでいきましたが、兄たちの悲しみは月日がたっても薄れることはありませんでした。
ある日、兄弟たちが妹に会いに行こうとすると、嫁たちはそれに気づいて、それぞれの夫に呪文をかけ、昼のうちだけは魚の姿に変えておくようにしました。それでも兄弟たちはどうしても妹に会わずにはいられなくなって、ある日、魚の姿のまま川に入り、流れをたどって妹に会いに行くことにしました。
妹が河で沐浴をしていると、七匹の魚が寄ってきて、彼女のまわりをぐるぐる回り始めました。妹はその魚を七匹とも捕って籠に入れ、家に持って帰りました。そして、いざ切ろうとすると、突然魚たちが、
「切るな切るな妹よ。俺たちはお前の兄さんだよ」
と歌い始めました。
そして驚いている妹に、魚たちは自分たちがなぜ魚になったのか、その訳を全部聞かせてやりました。妹は涙を流して話を聞くと、七匹の魚を水がめに入れてしまっておきました。
ところがこれを見ていた姑が、
「どうして嫁は魚を切らないんだろう」
と言って、妹のいないうちに魚を切って、全部料理してしまいました。

帰ってきた妹はこれを知ってさめざめと泣きました。そして魚のうろこが捨ててあるところへ走っていきました。すると、そこには大きな蓮の花が七つ咲いていました。
妹がその蓮の花のわきに座って泣いていると、そこへ一人の年老いた行者が通りかかりました。行者は泣いている妹を見て訳をたずねました。妹が訳を話すと、行者は小さな水壺に呪文を唱え、それを妹に渡して言いました。
「この水を一息でその蓮の花全部に吹き掛けてやるのじゃ。そうすればその七つの蓮は、お前の兄さんの姿にもどるじゃろう。だが、必ず一息で吹き掛けるのじゃよ」
けれどもかわいそうに、妹は一息で七つの花にその水を吹き掛けることに失敗してしまいました。七つの花は、七匹の大きなワニの姿になって河の方へとはって行ってしまいました。妹は、その河岸に座ったまま、いつまでも泣いていたということです。
西ベンガル州・メディニプル県採話
再話:西岡直樹
挿絵:西岡由利子
– このお話について –
ベンガル地方では、一つの命が次々と形を変えて生まれ変わり、受け継がれていくというお話しが良く聞かれます。
西岡直樹
※本文は、東京ジューキ食品ダージリン会刊『天竺南蛮情報』の『インド民話シリーズ』に連載していた文章を編集・加筆したものです。









