
ある商人に七人の娘がありました。商人はある日、娘たちをよんで聞きました。
「お前たちはだれのおかげで食べているのかね」
「はいお父さま、私たちはお父さまのおかげで食べています」
六人の娘たちは口をそろえて答えましたが、末の娘だけは
「お父さま、私は自分の働きと運で食べています」
と答えました。これを聞いて怒った商人は、
「それならお前は一人でやっていきなさい」
と言って、末の娘を森に捨てさせました。
末の娘といっしょに乳母がついて行きました。深い森の中で夕暮れになり、どうしてよいかわからなくなって二人で泣いていると、そばにあった大きなバニヤンの木の幹が二つに開いて、
「さあ、私の中に入りなさい。怖い獣がお前たちをおそわないように守ってあげよう」と言いました。
二人は中に入って夜をすごしました。
朝になって二人が外に出てみると、木の外側にはトラやクマの生々しい爪あとがありました。娘は池の底からへな土をとってきて、木のきず口にぬってやりました。すると木は喜んで言いました。
「私に実がなっていたら食べさせてあげるところだが、残念ながら私には実がならない。お前たちに良いことを教えてあげよう。町からアラレを買ってくるんだよ。そしてそれを半分食べて、残りの半分を池のほとりにまいておきなさい」
娘は木の言うとおりにしました。アラレを池のほとりにまいておくと、たくさんのクジャクがやってきてつつきあってそれを食べ、たくさんの羽を落としていきました。
娘はそれを集めてうちわを作り、乳母に町まで売りに行かせました。そのうちわはとてもよく売れました。そのお金でまたアラレを買い、半分を食べて残りをまたまいておきました。こうして娘はクジャクのうちわを売ってお金をためました。すっかりお金持になった娘は、そこに大きな家を建てました。
ある日、娘はたくさんの人を集めて池を掘らせることにしました。
いっぽう、娘の父親は商売に失敗して何もかも失い、乞食になっておりました。森の向こうで、金持ちの情深い女の人がたくさんの人をやとって池を掘らせていると聞いて、そこへ出かけて行きました。
娘は年老いた二人を見て、すぐにそれが自分の父母であることが分かりましたが、二人にはその女の人が自分の娘であることがわかりませんでした。娘は二人を家に迎え入れると体を洗わせ、新しい着物を着せてごちそうしました。
二人は、これはきっと自分たちを池の工事のための人柱にささげるつもりなのだろうと思ってふるえていましたが、そこへ美しく着飾った娘が出てきて、
「お父さん、お母さん、私はあなたがたの娘ですよ。これからはずっといっしょに暮らしましょうね」
と言って二人の手を取りました。二人はたいへん驚き、喜びました。そして、末の娘を森に捨てたことをたいへん後悔しました。
再話:西岡直樹
挿絵:西岡由利子
※本文は、東京ジューキ食品ダージリン会刊『天竺南蛮情報』の『インド民話シリーズ』に連載していた文章を編集・加筆したものです。









