
ある日、野に出た王様が、用足しをしようと、ココヤシの木の下でしゃがんでいると、急に空が曇って嵐になりました。すると、木の上の巣で、シュク鳥の母さんが雛鳥たちにこう言っているのが聞こえてきました。
「嵐くらいでキャアキャア騒ぐんじゃないよ。騒ぐとつかまえられるよ。つかまえられたらどうなるかって?お前たちは料理されて食われちまうんだよ。そしてお前たちを食った者はその口から、笑えば宝石が、泣けば真珠がこぼれ落ちるようになるのさ。」
これを聞いた王様は、翌日、家来や召使いを連れてその木のところに行き、巣から雛をとってこさせました。そしてそれを妃に渡し、夕食に食べるからと言って料理しておくように命じました。
妃が雛を料理してしばらくすると、二人の王子が学校から腹を空かせて帰ってきました。妃は二人の王子にご飯を出してやりましたが、雛の肉には決して手をつけないように言いました。ところが二人は妃がいなくなると、
「母上は食べるなと言っていたが、どれひとつ、味見を」
と言って一切れ食べ、二切れ食べしているうちに、とうとう全部たいらげてしまいました。
しばらくして帰ってきた妃は雛の肉がすっかり無くなっているのを見てびっくり、仕方なしにカエルをつかまえて料理し、もとどおりにしておきました。
王様は夕食どきに広間に人を集めると、
「今夜はおもしろいものを見せてやるぞ」
と言って、みんなの前で雛の肉を食べ、笑いに笑ってから床を探しました。けれど何もみつかりません。今度は大泣きに泣いて床を探してみましたが、一粒の真珠もこぼれ落ちたようすはありません。
「これは一体どうしたことじゃ?」
王様はそのまま占師のところに行きました。王様が占師に訳を話すと、占師は、その雛の肉は王子が食べて、その代わりに妃がカエルの肉を料理しておいたのだと教えました。
王様は首切役人を呼んで言いました。
「王子たちを殺してこい。わしはその血で水浴びをせねば気がおさまらん」
これを聞いた妃は二人の王子に食物を食べさせ、二つの目の向く方に、どこへでも行って二度と姿を現わさないように言いました。そして首切役人に、お金をやって犬を殺させ、その血で王様に水浴びをさせました。
二人の王子は河べりの道をどんどん歩いて逃げて行きました。もう一歩も歩けなくなって下の王子が泣きだすと、ボロボロと口から真珠がこぼれ落ちました。これを見た上の王子が笑うと、今度は自分の口から宝石がこぼれ落ちました。居合わせた村人たちがこれを見て二人をつかまえると、ぶったりくすぐったりして、真珠や宝石をひろい集めはじめました。
たまたま船でその岸を通りかかったある国の王様が、二人の王子が村人にいじめられているのを見ました。王様は船から降りてくると、二人を船に乗せ、国に連れて帰りました。王様は二人の王子を立派に育てあげ、年頃になると結婚させました。
ある日、二人の王子は馬にお嫁さんを乗せて、国へ帰っていきました。二人の姿を見ると、王様はあわててベッドの下にもぐりこみ、妃は両手を広げて喜んで迎えに出ました。それから、妃は王様をだまして犬の血で水浴させたことを白状しましたが、今となっては、王様は自分のわがままを悔い、わが子の生きていることを心から喜びました。そして二人の王子を胸に抱き、お嫁さんともども城に迎え入れました。それからというもの、二人の王子の口からは、泣いても笑ってもなにも出てこなくなったそうです。
西ベンガル州・チャッピス・パラガナ県採話
再話:西岡直樹
挿絵:西岡由利子
※本文は、東京ジューキ食品ダージリン会刊『天竺南蛮情報』の『インド民話シリーズ』に連載していた文章を編集・加筆したものです。