
ワニとジャッカルがいっしょに畑仕事をはじめたそうです。さて何を作ったかというと、初めに作ったのはジャガイモでした。ジャガイモは地面の下にできるに決まっています。地面の上にできる葉っぱなんか何の役にもたちやしない。ところが、ワニはこれを知りませんでした。わっさりと茂ったジャガイモ畑を見たワニは、ジャッカルをうまくまるめこんでやろうと思って言いました。
「きみが地面の下の方をとって、おいらが上の方をとることにしよう、それで文句はないかい?」
ジャッカルはただ笑って、「うん、それでいいや。」と答えました。
ジャガイモができるころになると、ワニはジャッカルより先に畑に出かけていって地面より上の部分を全部刈り取っていきました。ところが家に帰ってよくよく見るとジャガイモなんか一個もついていません。あわてて畑にもどってみましたが、もうそのときは畑のジャガイモはジャッカルが掘った後でした。ワニはつぶやきました。
「そうか、これはまったくうかつだったな。このつぎは見てろよ。」
今度は米を作ることになりました。ワニは、今度はうまくやってやろうと、ジャッカルに前もってこう言っておきました。
「おいらは上をもらうのはもうごめんだよ。今度はおいらに下の方をくれなくちゃね。」
これを聞いたジャッカルは、ニヤリとして答えました。
「うん、それでいいや。」
それから時もたって米がみのるころになると、今度は先にジャッカルが田んぼに行って、稲の根だけ残して上をぜんぶ刈りとっていきました。
さて、ワニはというと「今度こそうんと米を掘るぞ」とホクホクしながら田んぼに行きました。ところが田んぼを掘ってみてがっかり、根っこばかりで何にもありません。ワニはワラさえも得ることができませんでした。
ワニはぷんぷん腹を立ててジャッカルの家に行くと、こう言いました。
「こらっ、ジャッカルめ。今度は絶対きみには上の穂をやらないからな。穂はぜんぶおいらがもらうんだっ、いいなっ!」
「そんなに怒らないで、きみの言うとおりで文句はないよ。」
ジャッカルは笑いをこらえて言いました。
今度作ることになっていたのはサトウキビだったのです。
それからしばらくして、サトウキビの刈り入れの時がきました。ジャッカルはワニがいうままに、先にサトウキビの穂をワニに刈らせておきました。そしてワニが穂をぜんぶ持っていった後で、茎の方を刈り取って帰りました。そして家でうまそうにかじっていました。
一方、ワニとはいえば、ススキの穂みたいなサトウキビの穂を家に持ち帰ってくしゃくしゃとかんでいました。けれど、何だかしょっぱいだけで、ちっとも甘くありません。しゃくにさわったワニは、サトウキビの穂をみんな放り投げて、ジャッカルのところへ駆けてってこう言いました。
「あ〜あ!もうきみなんかといっしょに畑仕事をするのはこりごりだ。ずいぶんバカ見たよ。」
(『さいほう鳥のお話集』サウペンドロ・キショル・ライチョウドリより)
再話:西岡直樹
挿絵:西岡由利子
※本文は、東京ジューキ食品ダージリン会刊『天竺南蛮情報』の『インド民話シリーズ』に連載していた文章を編集・加筆したものです。