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第14話『タールのかかし』

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お百姓が畑にサトイモのたねイモを植えつけていると、そこヘ一匹のジャッカルがやってきてこう言いました。

「なんだい、そんなふうに植えてたら、らちがあかないよ。

その種イモはゆでてから土壺どつぼに入れてうめておかなくちゃね。そしたらすぐに大きくなるよ」

「こりゃよいことを聞いた」

お百姓はさっそくそのようにしておきました。

つぎの日、お百姓が畑に行ってみると、土壺の中の種イモは大きくなっているどころか、きれいさっぱりなくなっていました。

「これはジャッカルにしてやられた」

お百姓はすんだことはあきらめて、また種イモを植えなおしました。そして、こんどは黒いタールで人形を作って畑のわきに立たせておきました。

その晩、またジャッカルが畑に行くと、黒い人影ひとかげが立っています。ジャッカルはトコトコと近づいて、

「このやろう。見張みはりなんかに立ちやがって」と言って人形を足でけとばしました。するとけとばした足が人形にぴたっとくっついてはなれなくなりました。ジャッカルは、

「こいつはなさないか、おれにはもう三本の足としっぽがあるんだぞ」

と言って前足の一方でなぐりかかリました。するとその前足もぴたりとくっついてしまいました。ジャッカルは残りの足としっぽでなぐりにかかりましたが、みんなぴったりとくっついて身動きがとれなくなってしまいました。

つぎの朝ジャッカルを見つけたお百姓が、どうやって始末してやろうかと考えていると、ジャッカルがなさけない声でこう言いました。

黒砂糖くろさとうの壺に入れられたらもうたまらん」

これを聞いたお百姓は、さっそくジャッカルを家にかついでいって黒砂糖の壺の中に入れてふたをしてしまいました。

ところが、朝になってふたをあけてみると、ジャッカルは死んでいるどころか、黒砂糖を全部喰いつくしていい気にしています。お百姓がカンカンになって怒っていると、ジャッカルはこう言いました。

「このうえ、水の壺に入れられでもしたらひとたまりもない」

そこでお百姓はジャッカルを担いでいって、水壺の中につっこんでやりました。ところがです、よく朝ふたを開けてみるとジャッカルはすっかり水を飲みつくしてすずしい顔をしています。お百姓がどうしてくれようかと考えあぐねていると、ジャッカルは言いました。

「本当のことを言うと、おれは川につれていかれてそこで尻の穴に砂をつめられ、水につきおとされたらまちがいなく死ぬよ」

 お百姓はさっそくジャッカルを川へかついで行き、そこでジャッカルの尻のあなに砂をつめ込みました。つめ終わったころ、ジャッカルが言いました。

「ようし、ではよくねらいをつけて尻を押してくれよ」

お百姓はねらいをさだめ、ジャッカルの尻を押しました。するとジャッカルがいきなりおならをしたのでたまりません。き出た砂が目に入っておろおろしているお百姓をしりめに、ジャッカルは、

「あっはっは、お前さんなんかに殺されてたまるもんか」

と言って川をわたって逃げて行ってしまいました。

西ペンガル州 ビルブム県採話

再話:西岡直樹
挿絵:西岡由利子

※本文は、東京ジューキ食品ダージリン会刊『天竺南蛮情報』の『インド民話シリーズ』に連載していた文章を編集・加筆したものです。

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第13話『シカの友だち』

ある森に一匹のジャッカルがいました。その森にはもういい獲物が少なくなってしまったので、ある日、ジャッカルは他の森に足をのばすことにしました。

その森には、一頭の体格のいい立派なシカがいました。悪いことにかけては頭の回転がいいジャッカルは、シカを見るとまずはお近づきになろうと考えました。そしてシカのところへ行って、こう言いました。

「ねえきみ、ぼくと友だちにならないか。ぼくたちきっといい友だちになれると思うよ。きみが危ない目にあったときはぼくがきみを助け、ぼくが危ない目にあったときにはきみがぼくを助けるんだ」

気のいいシカは喜んでジャッカルと友だちになることにしました。

ずっとまえからシカと仲良しだったカラスは、これを聞いて鹿に耳うちしました。

「シカくん、素性の良く分らない者にそうやすやすと気を許しちゃいけないよ」

でもシカは気にしませんでした。

ある日、ジャッカルはシカにこう言いました。

「なんだ、きみはいつもこんな所でこんなまずそうな雑草ばかり食べているのかい。ぼくがひとついい所を教えてあげるよ」

ジャッカルはこう言ってシカをある百姓のナタネ畑に連れて行きました。シカは、わっさりと繁ったナタネの苗を食べてみました。それはそれは柔らかくてうまいものでした。シカはナタネの味が忘れられなくなって、それからは毎日、ジャッカルと連れだってその畑にかようようになりました。

ある日、これに気づいたお百姓は、畑にワナをしかけました。そしてシカはそのワナに足をとられてしまいました。ワナを外そうとあわてて足を引っばろうとしましたが、ワナは足に強くくいこんで離れません。シカはジャッカルに助けを求めました。

するとジャッカルは、

「そのワナは皮でできているんだろう。残念だけど、ぼくは今日は皮を口にしちゃいけない日なんだ。どうしたらいいだろう」

こう言ってとぼけています。

夕方になっても友だちのシカが帰ってこないので、カラスが心配して探しに行くと、シカが畑でワナにかかって苦しんでいるのを見つけました。カラスはシカのところへ舞い下りてこう言いました。

「いいかい、きみは明日の朝お百姓が来る前に、四つの足を空に向けてつっぱって転がっているんだ。そうしたらぼくが、きみの頭にとまって目をつっついて食べているまねをするからね」

翌朝、お百姓がこん棒を持ってやってきました。そして足を空に向けて転がって、カラスに目をつつかれている鹿を見つけました。

「何だこのシカの野郎!もう死んでいるとは手間いらずだ。殴るまでもない」

お百姓がこう言ながらシカの足をワナから外すと、シカはぱっと身を起こして森の中へ逃げて行きました。

シカにしてやられた百姓は、くやしがって持っていたこん棒を思いきりシカの方に向けて投げつけました。すると、こん棒は飛んでってヤブの中で隠れて、見ていたジャッカルに当たりました。

ジャッカルは、シカが百姓に殺されてその腹わたにありつけるのを今か今かと待っていたのに、とんだとばっちりをくらって自分が命を落してしまいました。

西ペンガル州 ビルブム県採話

再話:西岡直樹
挿絵:西岡由利子

※本文は、東京ジューキ食品ダージリン会刊『天竺南蛮情報』の『インド民話シリーズ』に連載していた文章を編集・加筆したものです。

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第2話『ワニとジャッカルの畑仕事』

サトウキビの穂を刈るワニ

ワニとジャッカルがいっしょに畑仕事をはじめたそうです。さて何を作ったかというと、初めに作ったのはジャガイモでした。ジャガイモは地面の下にできるに決まっています。地面の上にできる葉っぱなんか何の役にもたちやしない。ところが、ワニはこれを知りませんでした。わっさりと茂ったジャガイモ畑を見たワニは、ジャッカルをうまくまるめこんでやろうと思って言いました。

「きみが地面の下の方をとって、おいらが上の方をとることにしよう、それで文句はないかい?」

ジャッカルはただ笑って、「うん、それでいいや」と答えました。

ジャガイモができるころになると、ワニはジャッカルより先に畑に出かけていって地面より上の部分を全部刈り取っていきました。ところが家に帰ってよくよく見るとジャガイモなんか一個もついていません。あわてて畑にもどってみましたが、もうそのときは畑のジャガイモはジャッカルが掘った後でした。ワニはつぶやきました。

「そうか、これはまったくうかつだったな。このつぎは見てろよ」

今度は米を作ることになりました。ワニは、今度はうまくやってやろうと、ジャッカルに前もってこう言っておきました。

「おいらは上をもらうのはもうごめんだよ。今度はおいらに下の方をくれなくちゃね」

これを聞いたジャッカルは、ニヤリとして答えました。

「うん、それでいいや」

それから時もたって米がみのるころになると、今度は先にジャッカルが田んぼに行って、稲の根だけ残して上をぜんぶ刈りとっていきました。

さて、ワニはというと「今度こそうんと米を掘るぞ」とホクホクしながら田んぼに行きました。ところが田んぼを掘ってみてがっかり、根っこばかりで何にもありません。ワニはワラさえも得ることができませんでした。

ワニはぷんぷん腹を立ててジャッカルの家に行くと、こう言いました。

「こらっ、ジャッカルめ。今度は絶対きみには上の穂をやらないからな。穂はぜんぶおいらがもらうんだっ、いいなっ!」

「そんなに怒らないで、きみの言うとおりで文句はないよ」

ジャッカルは笑いをこらえて言いました。

今度作ることになっていたのはサトウキビだったのです。

それからしばらくして、サトウキビの刈り入れの時がきました。ジャッカルはワニがいうままに、先にサトウキビの穂をワニに刈らせておきました。そしてワニが穂をぜんぶ持っていった後で、茎の方を刈り取って帰りました。そして家でうまそうにかじっていました。

一方、ワニとはいえば、ススキの穂みたいなサトウキビの穂を家に持ち帰ってくしゃくしゃとかんでいました。けれど、何だかしょっぱいだけで、ちっとも甘くありません。しゃくにさわったワニは、サトウキビの穂をみんな放り投げて、ジャッカルのところへ駆けてってこう言いました。

「あ〜あ!もうきみなんかといっしょに畑仕事をするのはこりごりだ。ずいぶんバカ見たよ」

(『さいほう鳥のお話集』サウペンドロ・キショル・ライチョウドリより)

再話:西岡直樹
挿絵:西岡由利子

※本文は、東京ジューキ食品ダージリン会刊『天竺南蛮情報』の『インド民話シリーズ』に連載していた文章を編集・加筆したものです。

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第1話『象の腹に入ったジャッカル』

ある王様が大きくて立派な象を飼っていました。王様はその象をたいへん可愛がって、どこへ行くにもその象に乗っていきました。ところが、ある日突然その象が死んでしまったのです。王様はひじょうに悲しみました。できることなら象の亡骸をずっとそばに置いておきたいと思ったのですが、そうもいきません。王様は仕方なくその象を荒地に捨ててくるように命じました。翌日、五百人もの家来たちが象の足に太い網をかけ、それを引いて行きました。

その荒地には一匹のジャッカルが住んでいました。ジャッカルはこのところずっと獲物にありつけず、たいへんひもじい思いをしていました。そんなところへ大きな象が転がり込んできたのだから、ジャッカルの喜びようときたらありません。王様の家来たちが帰ってしまうと、すぐに飛んでってやわらかそうな象の腹のあたりにかぶりつきました。あんまり腹が減っていたジャッカルは、肉を喰い喰いついには象の腹の中まで入ってしまいました。そしてそのまま夢中になって喰い続けていました。こうしてジャッカルは二日も象の腹の中で肉を喰い、眠っていたでしょうか。

「腹もふくらんだし、さてここらで・・・」

ジャッカルは外に出ようとしてはたと困ってしまいました。二日の間日に照らされた象の皮はすっかり縮んで、穴が小さくなってしまったのです。腹のふくれたジャッカルは象の腹から出ることができなくなってしまいました。

ジャッカルが外を覗きながらどうしたらよいものかと考えていると、そこへ農夫が三人通りかかりました。ジャッカルは機転をきかせて象の腹の中から三人に呼びかけました。

「もしもし、そこへ行くお方、どうか王様のところへ行って、壺25杯のギー(バターオイル)を持ってきてわたしの体に塗るように言っておくれ。そうすれば私は再び起き上がって歩くことができるとね」

これを聞いてたまげた三人の農夫は、王様のところへ駆けつけてこのことを言いました。王様はたいへん喜んでこう言いました。

「ギー25壺じゃ少ない、すぐに千壺のギーを持っていって象に塗ってこい」

たちまち千人もの人夫が千個の壺を担いで行き、2千人もの人が寄ってたかって象にギーを塗りたくり始めました。それギー、やれギー、荒野ではギーよりほかの言葉は聞かれないほどです。

こうして7日も経つと象の皮もずいぶんゆるんで穴も広がってきました。出ようとすればもう出られます。ジャッカルは外のみんなに言いました。

「さあ立つぞ、よろけて倒れると危ない。みんなどいた、どいた!」

これを聞いてみんなは壺やらギーを放り出していっせいに逃げ出しました。

「逃げるにゃ今だ」

頭の良いジャッカルはすばやく象の腹から飛び出して、森の中へと姿を消しました。

採録・再話:西岡直樹
挿絵:西岡由利子

※本文は、東京ジューキ食品ダージリン会刊『天竺南蛮情報』の『インド民話シリーズ』に連載していた文章を編集・加筆したものです。