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第17話『七匹のワニ』

ある町に七人兄弟の商人がいました。そしてその兄弟には、末に可愛い妹が一人いました。

ある日、七人兄弟は遠い国へ商いの旅に出かけました。七人は神や魔物の住む国まで行って、そこで七人の美しい女に出会い、それぞれみんな結婚して家に帰ってきました。ところが、この嫁たちというのが、じつはみんな性悪の魔物だったのです。

家に来ると、嫁たちはみんなして末の妹を邪魔者扱いし、つらく当たりました。兄たちは見るに見かねて、妹を遠くの村に嫁にやることにしました。妹は泣く泣く嫁いでいきましたが、兄たちの悲しみは月日がたっても薄れることはありませんでした。

ある日、兄弟たちが妹に会いに行こうとすると、嫁たちはそれに気づいて、それぞれの夫に呪文をかけ、昼のうちだけは魚の姿に変えておくようにしました。それでも兄弟たちはどうしても妹に会わずにはいられなくなって、ある日、魚の姿のまま川に入り、流れをたどって妹に会いに行くことにしました。

妹が河で沐浴をしていると、七匹の魚が寄ってきて、彼女のまわりをぐるぐる回り始めました。妹はその魚を七匹とも捕って籠に入れ、家に持って帰りました。そして、いざ切ろうとすると、突然魚たちが、

「切るな切るな妹よ。俺たちはお前の兄さんだよ」

と歌い始めました。

そして驚いている妹に、魚たちは自分たちがなぜ魚になったのか、その訳を全部聞かせてやりました。妹は涙を流して話を聞くと、七匹の魚を水がめに入れてしまっておきました。

ところがこれを見ていた姑が、

「どうして嫁は魚を切らないんだろう」

と言って、妹のいないうちに魚を切って、全部料理してしまいました。

帰ってきた妹はこれを知ってさめざめと泣きました。そして魚のうろこが捨ててあるところへ走っていきました。すると、そこには大きな蓮の花が七つ咲いていました。

妹がその蓮の花のわきに座って泣いていると、そこへ一人の年老いた行者が通りかかりました。行者は泣いている妹を見て訳をたずねました。妹が訳を話すと、行者は小さな水壺に呪文を唱え、それを妹に渡して言いました。

「この水を一息でその蓮の花全部に吹き掛けてやるのじゃ。そうすればその七つの蓮は、お前の兄さんの姿にもどるじゃろう。だが、必ず一息で吹き掛けるのじゃよ」

けれどもかわいそうに、妹は一息で七つの花にその水を吹き掛けることに失敗してしまいました。七つの花は、七匹の大きなワニの姿になって河の方へとはって行ってしまいました。妹は、その河岸に座ったまま、いつまでも泣いていたということです。

西ベンガル州・メディニプル県採話

再話:西岡直樹
挿絵:西岡由利子

– このお話について –

ベンガル地方では、一つの命が次々と形を変えて生まれ変わり、受け継がれていくというお話しが良く聞かれます。

西岡直樹

※本文は、東京ジューキ食品ダージリン会刊『天竺南蛮情報』の『インド民話シリーズ』に連載していた文章を編集・加筆したものです。

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第16話『一たばの髪と二たばの髪』

機織はたおりには二人の妻がありました。上の妻の髪はたった一たばね、けれど下の妻は二たばねもありました。機織は下の妻ばかり可愛がって、上の妻にはちっとも目をかけませんでした。

あるとき、亭主が留守のうちに二人の妻はケンカをしました。下の妻は、上の妻のーたばねしかなかった髪をつかんでみんな引抜いてしまいました。

上の妻は泣く泣く家を出て、森の道を歩いていました。すると、一本の綿の木がやぶの中に生えているのが目にとまりました。上の妻はこれを見て、綿の木のまわりにあったやぶ草を抜いてきれいにしてやりました。しばらく行くと、つる草にからまれたバナナの木がありました。これも上の妻はバナナの幹にからんだつる草を引きちぎってきれいにしてやりました。なおも行くと今度はトゥルシィー(カミメボウキというシソ科の神聖な植物)がやぶの中に生えていましたが、これも根元のやぶ草を残らず抜いて、きれいにしてやりました。

森の奥深くまで行くと、庵があって聖者が瞑想していました。上の妻は聖者のところへ行って、聖者のつま先に手を触れ、深々とおじぎをしてから、悲しい胸のうちを話しました。すると聖者は池の方を指さしてこう言いました。

「あそこの池でまず沐浴をしてくるがよい。一度だけ水にもぐるのじゃよ」

上の妻は池に行って、一度ざぶんと水にもぐりました。すると髪は両手にたばねきれないほどふさふさと伸び、顔も体も若返って見違えるほど美しくなりました。喜んで聖者のところへ行くと、聖者は庵の中にある竹かごを指さして言いました。

「あの竹かごの中から、好きなのを一つ持って帰るがよい」

上の妻は、大きいのは重たそうなので、一番小さいのをもらって帰りました。

帰り道、トゥルシィーの草は、「夫から愛されますように」と祝福の声をかけました。バナナの木は「これで扇げば、バナナの実や色々な果実がでてきますよ」と言って、大きな葉っぱを一枚くれました。綿の木は、これをゆすれば素敵な布がでてきますよ」と言って、綿のついた枝を一本くれました。

上の妻は喜んで家に帰り、かごのふたをあけてみました。すると、中には宝石がいっぱいつまっていました。

これを見た下の妻は、くやしいのをこらえて、上の妻から事の経緯を根掘り葉掘り聞きだすと、森の聖者のところへ出かけていきました。途中に何があろうと見向きもせずに行きました。

庵に着くと聖者は下の妻にも同じように、池へ行って一度だけもぐってくるように言いました。そこで、下の妻も池に行って一度もぐって見ました。すると、二たばあった髪はさらにふさふさになって、とてもきれいになりました。

これに気をよくした上の妻は、

「ようし、上の妻よりもっときれいになってやるんだわ」

こう言って、もう一度水にもぐってしまいました。すると残念、もとの姿にもどってしまいました。ブツブツ文句を言いながら庵へもどると、聖者は「欲張るからじゃよ」と言って、下の妻には何もやらずに追い返してしまいました。

数日して旅から帰った亭主は、上の妻が美しくなったのに驚き、籠の宝石のことを知ってこれまた大喜びをしました。そして今度は反対に上の妻の方を大切にするようになりました。下の妻はくやしさをこらえて、料理をしたり掃除をしたり、下働きをして暮らすよりほかなかったそうです。

西ベンガル州・チャッビス・バラガナ県採話

再話:西岡直樹
挿絵:西岡由利子

※本文は、東京ジューキ食品ダージリン会刊『天竺南蛮情報』の『インド民話シリーズ』に連載していた文章を編集・加筆したものです。