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第15話『捨てられた娘』

ある商人しょうにんに七人のむすめがありました。商人はある日、娘たちをよんできました。

「お前たちはだれのおかげでべているのかね」

「はいおとうさま、私たちはお父さまのおかげで食べています」

六人の娘たちは口をそろえて答えましたが、すえの娘だけは

「お父さま、私は自分の働きと運で食べています」

と答えました。これを聞いておこった商人は、

「それならお前は一人でやっていきなさい」

と言って、末の娘を森にてさせました。

末の娘といっしょに乳母うばがついて行きました。ふかい森の中で夕暮ゆうぐれれになり、どうしてよいかわからなくなって二人でいていると、そばにあった大きなバニヤンの木のみきが二つにひらいて、

「さあ、私の中に入りなさい。こわけものがお前たちをおそわないようにまもってあげよう」と言いました。

二人は中に入ってよるをすごしました。

あさになって二人が外に出てみると、木の外側そとがわにはトラやクマの生々なまなましいつめあとがありました。娘はいけそこからへなつちをとってきて、木のきず口にぬってやりました。すると木はよろこんで言いました。

「私にがなっていたら食べさせてあげるところだが、残念ざんねんながら私には実がならない。お前たちに良いことをおしえてあげよう。まちからアラレをってくるんだよ。そしてそれを半分はんぶん食べて、のこりの半分を池のほとりにまいておきなさい」

娘は木の言うとおりにしました。アラレを池のほとりにまいておくと、たくさんのクジャクがやってきてつつきあってそれを食べ、たくさんのはねとしていきました。

娘はそれをあつめてうちわを作り、乳母うばに町までりに行かせました。そのうちわはとてもよく売れました。そのお金でまたアラレを買い、半分を食べて残りをまたまいておきました。こうして娘はクジャクのうちわを売ってお金をためました。すっかりお金持かねもちになった娘は、そこに大きないえてました。

ある日、娘はたくさんの人を集めて池をらせることにしました。

いっぽう、娘の父親は商売に失敗しっぱいして何もかも失い、乞食こじきになっておりました。森の向こうで、金持ちの情深なさけぶかい女の人がたくさんの人をやとって池を掘らせていると聞いて、そこへ出かけて行きました。

娘は年老としおいた二人を見て、すぐにそれが自分の父母であることが分かりましたが、二人にはその女の人が自分の娘であることがわかりませんでした。娘は二人を家にむかえ入れると体をあらわせ、あたらしい着物きものせてごちそうしました。

二人は、これはきっと自分たちを池の工事のための人柱ひとばしらにささげるつもりなのだろうと思ってふるえていましたが、そこへ美しくかざった娘が出てきて、

「お父さん、お母さん、私はあなたがたの娘ですよ。これからはずっといっしょにらしましょうね」

と言って二人の手を取りました。二人はたいへんおどろき、喜びました。そして、末の娘を森に捨てたことをたいへん後悔こうかいしました。

再話:西岡直樹
挿絵:西岡由利子

※本文は、東京ジューキ食品ダージリン会刊『天竺南蛮情報』の『インド民話シリーズ』に連載していた文章を編集・加筆したものです。