
ある森に一匹のジャッカルがいました。その森にはもういい獲物が少なくなってしまったので、ある日、ジャッカルは他の森に足をのばすことにしました。
その森には、一頭の体格のいい立派なシカがいました。悪いことにかけては頭の回転がいいジャッカルは、シカを見るとまずはお近づきになろうと考えました。そしてシカのところへ行って、こう言いました。
「ねえきみ、ぼくと友だちにならないか。ぼくたちきっといい友だちになれると思うよ。きみが危ない目にあったときはぼくがきみを助け、ぼくが危ない目にあったときにはきみがぼくを助けるんだ」
気のいいシカは喜んでジャッカルと友だちになることにしました。
ずっとまえからシカと仲良しだったカラスは、これを聞いて鹿に耳うちしました。
「シカくん、素性の良く分らない者にそうやすやすと気を許しちゃいけないよ」
でもシカは気にしませんでした。
ある日、ジャッカルはシカにこう言いました。
「なんだ、きみはいつもこんな所でこんなまずそうな雑草ばかり食べているのかい。ぼくがひとついい所を教えてあげるよ」
ジャッカルはこう言ってシカをある百姓のナタネ畑に連れて行きました。シカは、わっさりと繁ったナタネの苗を食べてみました。それはそれは柔らかくてうまいものでした。シカはナタネの味が忘れられなくなって、それからは毎日、ジャッカルと連れだってその畑にかようようになりました。
ある日、これに気づいたお百姓は、畑にワナをしかけました。そしてシカはそのワナに足をとられてしまいました。ワナを外そうとあわてて足を引っばろうとしましたが、ワナは足に強くくいこんで離れません。シカはジャッカルに助けを求めました。
するとジャッカルは、
「そのワナは皮でできているんだろう。残念だけど、ぼくは今日は皮を口にしちゃいけない日なんだ。どうしたらいいだろう」
こう言ってとぼけています。
夕方になっても友だちのシカが帰ってこないので、カラスが心配して探しに行くと、シカが畑でワナにかかって苦しんでいるのを見つけました。カラスはシカのところへ舞い下りてこう言いました。
「いいかい、きみは明日の朝お百姓が来る前に、四つの足を空に向けてつっぱって転がっているんだ。そうしたらぼくが、きみの頭にとまって目をつっついて食べているまねをするからね」

翌朝、お百姓がこん棒を持ってやってきました。そして足を空に向けて転がって、カラスに目をつつかれている鹿を見つけました。
「何だこのシカの野郎!もう死んでいるとは手間いらずだ。殴るまでもない」
お百姓がこう言ながらシカの足をワナから外すと、シカはぱっと身を起こして森の中へ逃げて行きました。
シカにしてやられた百姓は、くやしがって持っていたこん棒を思いきりシカの方に向けて投げつけました。すると、こん棒は飛んでってヤブの中で隠れて、見ていたジャッカルに当たりました。
ジャッカルは、シカが百姓に殺されてその腹わたにありつけるのを今か今かと待っていたのに、とんだとばっちりをくらって自分が命を落してしまいました。
西ペンガル州 ピルプム県採話
再話:西岡直樹
挿絵:西岡由利子
※本文は、東京ジューキ食品ダージリン会刊『天竺南蛮情報』の『インド民話シリーズ』に連載していた文章を編集・加筆したものです。