
あるところに、大工の爺さんがおりました。ある日、爺さんが仕事部屋で大工仕事をしていると、台所から、「ジューン、ジューン」と、何かを揚げる音が聞こえてきました。
爺さんは、「ははあ、これは婆さんが揚げピテ(半月形の米粉団子)を作りはじめたな」と思って、その音のするたびに一つ二つと木に刻みをつけておきました。
しばらくすると婆さんが、できたての熱いピテを持ってきました。
それをうまそうに平らげてしまってから、爺さんは言いました。
「残りのピテも出してくれよ」
「もうこれでおしまいですよ」
婆さんがこうと言うと、爺さんは
「いやいや、俺にはわかっているぞ。お前はピテをこれだけ作ったじゃないか」
と言って数をピタリと当てました。
婆さんはびっくりしました。そして、これはてっきり爺さんが占いを覚えたのだと思いました。
婆さんは王様の城で下働きをしていました。ある日、お姫さまが耳飾りをなくして大騒ぎになりました。そのとき婆さんはお姫さまに自信たっぷりにこう言ったのです。
「私の亭主は占いを知っているから、あの人に頼めばすぐにありかを教えてくれますよ」
さっそく城から使いの者が爺さんを呼びにきました。
「これは困ったな、どうしよう。」
爺さんはこう思いながらも、とにかく城へ行き、しばらく考えこんでいました。すると王様が出てきて言いました。
「どうじゃ、占いは立ったかな?まあムリ(無糖のポン菓子)でも食べながらゆっくりやっとくれ」
と言って爺さんにムリを置いていきました。
爺さんはムリを持って池のほとりへ行き、ポリポリとムリを食べながら何と答えたらよいか考えていました。するとそこへ、お姫さまのお仕えをしている二人の女中が水を汲みにやってきました。ちょうどそのときムリを食べ終えた爺さんは、大きなため息をついてこう言いました。
「あーあ、この占いはナリ(できない)かパリ(できる)か…だ。まあ水でも飲むか」
すると、二人の女中があわてて駆け寄ってきて、爺さんの足もとにすがりついてきました。実をいうと、この二人は名前をナリとパリといったのです。二人はひざまずいて、
「どうか私たちの名を王様に言わないでください。首が飛んでしまいます。お姫さまの耳飾りを池の石段で拾ったのは私たちですが、あまり騒ぎが大きくなったので、申し出るのがこわくなってしまったのです」
こういうと、サリーのはしに包んで隠し持っていた耳飾りを取り出して爺さんに渡しました。
「これは救われた」
爺さんは心の中でこうとつぶやくと、急いで王様のところへ耳飾りを持っていきました。そしてこう言いました。
「占いに出たとおり、耳飾りは池の石段に落ちていましたぞ。きっとお姫様が水浴びのときに落としたのでしょう」
爺さんは王様からたくさんごほうびをもらって、喜んで帰っていきました。
西ペンガル州 チョッビス・ポルゴナ県採話
再話:西岡直樹
挿絵:西岡由利子
※本文は、東京ジューキ食品ダージリン会刊『天竺南蛮情報』の『インド民話シリーズ』に連載していた文章を編集・加筆したものです。