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第7話『壺の巨人』

第7話『壺の巨人』

ある村に、大変貧乏な漁夫がいました。漁夫は、わずかばかりの魚をとって、細々と暮らしていました。

ある日、漁夫がいつものように川で網を打っていると、いつになく重い手ごたえがありました。これは大きな魚に違いないと思って引き上げてみると、それは古びた土壺でした。

漁夫は「まあ、土壺でもいい。売ればいくらかの金にはなるだろう」

と思って手に取ってみると、壺にはかたく蓋がしてありました。それをこじ開けようとしたとたん、壺の口からフシュフシュと煙が出てきました。

驚いた漁夫が少し身を引いて見ていると、煙の中から一人の巨人が現れ

「さあ、おまえを喰ってやるぞ」と言いました。

漁夫はあわてて言いました。

「わたしがあんたに何をしたというんだ。壺から出してやったこのわたしを、あんたは喰うというのか?」

すると巨人は、天が割れるような大声で笑って言いました。

「わはは、壺から出してくれと頼んだ覚えはない。つべこべ言うな」

怖くなった漁夫は、どうしたらよいものか考えて、こう言いました。

「わたしを喰うのはいい。でも、あんたのように大きな男が、どうやってあの小さな壺に入っていたのか、頭の悪い私にはどうしても信じられない。ひとつやって見せておくれ」

巨人はわははっと笑って

「それでは見ていろ」と言うと、すうっと小さくなって、再び壺の中に入ってみせました。

漁夫はそのときを逃さず、すぐさま壺にかけより、きっちりと蓋をしてしまいました。

「どうだ、ざまあみろ」

 漁夫が笑ってこう言うと、壺の中から巨人のいかにも哀れな声が聞こえてきました。

「どうかここから出しておくれ、出してくれればお前にたくさんの宝物をやろう。決しておまえをだましたりはしない」

漁夫はもともと心根のやさしい男だったので、巨人を哀れに思い、もう一度蓋を開けてやりました。

巨人は、煙とともに出てくると、今度は漁夫にたくさんの宝物を渡して、すーっと姿を消してしまいました。

こうして漁夫は、その後何不自由ない暮らしを手に入れたということです。

西ペンガル州 チョッビス・ポルゴナ県採話

再話:西岡直樹
挿絵:西岡由利子

※本文は、東京ジューキ食品ダージリン会刊『天竺南蛮情報』の『インド民話シリーズ』に連載していた文章を編集・加筆したものです。