
お百姓が畑にサトイモの種イモを植えつけていると、そこヘ一匹のジャッカルがやってきてこう言いました。
「なんだい、そんなふうに植えてたら、らちがあかないよ。
その種イモはゆでてから土壺に入れてうめておかなくちゃね。そしたらすぐに大きくなるよ」
「こりゃよいことを聞いた」
お百姓はさっそくそのようにしておきました。
つぎの日、お百姓が畑に行ってみると、土壺の中の種イモは大きくなっているどころか、きれいさっぱりなくなっていました。
「これはジャッカルにしてやられた」
お百姓はすんだことはあきらめて、また種イモを植えなおしました。そして、こんどは黒いタールで人形を作って畑のわきに立たせておきました。
その晩、またジャッカルが畑に行くと、黒い人影が立っています。ジャッカルはトコトコと近づいて、
「このやろう。見張なんかに立ちやがって」と言って人形を足でけとばしました。するとけとばした足が人形にぴたっとくっついてはなれなくなりました。ジャッカルは、
「こいつ放さないか、おれにはもう三本の足としっぽがあるんだぞ」
と言って前足の一方でなぐりかかリました。するとその前足もぴたりとくっついてしまいました。ジャッカルは残りの足としっぽでなぐりにかかりましたが、みんなぴったりとくっついて身動きがとれなくなってしまいました。
つぎの朝ジャッカルを見つけたお百姓が、どうやって始末してやろうかと考えていると、ジャッカルがなさけない声でこう言いました。
「黒砂糖の壺に入れられたらもうたまらん」
これを聞いたお百姓は、さっそくジャッカルを家に担いでいって黒砂糖の壺の中に入れてふたをしてしまいました。
ところが、朝になってふたをあけてみると、ジャッカルは死んでいるどころか、黒砂糖を全部喰いつくしていい気にしています。お百姓がカンカンになって怒っていると、ジャッカルはこう言いました。
「このうえ、水の壺に入れられでもしたらひとたまりもない」
そこでお百姓はジャッカルを担いでいって、水壺の中につっこんでやりました。ところがです、よく朝ふたを開けてみるとジャッカルはすっかり水を飲みつくしてすずしい顔をしています。お百姓がどうしてくれようかと考えあぐねていると、ジャッカルは言いました。
「本当のことを言うと、おれは川につれていかれてそこで尻の穴に砂をつめられ、水につきおとされたらまちがいなく死ぬよ」
お百姓はさっそくジャッカルを川へかついで行き、そこでジャッカルの尻のあなに砂をつめ込みました。つめ終わったころ、ジャッカルが言いました。
「ようし、ではよくねらいをつけて尻を押してくれよ」
お百姓はねらいをさだめ、ジャッカルの尻を押しました。するとジャッカルがいきなりおならをしたのでたまりません。吹き出た砂が目に入っておろおろしているお百姓をしりめに、ジャッカルは、
「あっはっは、お前さんなんかに殺されてたまるもんか」
と言って川をわたって逃げて行ってしまいました。
西ペンガル州 ビルブム県採話
再話:西岡直樹
挿絵:西岡由利子
※本文は、東京ジューキ食品ダージリン会刊『天竺南蛮情報』の『インド民話シリーズ』に連載していた文章を編集・加筆したものです。