いろいろな植物で染めるのは楽しい。古くから使われるキアイやインドアカネはもちろん、池に浮かぶ蓮やガガブタなどの水草でも良い色が染まる。また染めた糸を経と緯に織り重ねる時も、少量の試し織りと長い反物とでは表情が違い、出来上がるまで、いつもわくわくはらはらさせられる。
カテゴリー: インドの工房にて
ベンガルのカンタ(刺し子)
カンタはもともとインドベンガル地方の家庭の女性の中で、日常の楽しみ、豊かさとして培われ、大切にされたものです。それは、まるで糸と針という簡単な道具で描く女性たちの芸術のようにで、色もモチーフも多彩、自由でおおらかです。日常のいろいろな規制があっても、あるいはそれがあればあるほど布の上で女性たちは自由に楽しみます。女性たちが、いかにその中で活きいきと集中するか、その楽しみが見るものにも伝わるのです。
多くの時間を費やした後できあがったこの布は、丈夫で何年も愛用され、修復されながらもボロボロになるまで使い果たされます。優れたものが現在にあまり残されていないのもそれゆえのように思われます。刺繍に使われる糸は、本来サリーのボーダーにある色糸を抜いて刺繍糸にしていましたが、今ではどんな奥地の田舎でも色とりどりの刺繍糸が塩やスパイスと共に雑貨屋で売られています。
*カンタについて以前書いたものはこちら。
インドアカネ
アカネ科 Rubia cordifolia L., Rubia manjista.
茜染料は、インダス文明、紀元前二千年の頃にはすでに糸を染める染料として用いられていたと言われています。茜染めの染方法は西北部インド周辺では古代から伝承され、その色は繊維がなくなるまで変わらないと言われるほど技術が高かったようです。この地方で用いられていた茜は主に二種類あると思われ、ヒマラヤ山麓の丘陵地帯、チョタナーグプルやスリランカの山岳地に自生する四葉のインドアカネ、またアフガニスタン、イランで採れる六葉のセイウヨウアカネが両方使われていたのではないかと思われます。
インドアカネは、根は太いひげ状をしていて、現在でも薬用として売られています。アナンダ工房は、この乾燥したインドアカネを用いています。染めるたびに色合いが異なりますが、毎回より美しい色が染まるよう苦心しています。美しい色を見ることはこの上なく幸せです。(図=直樹 文=由利子)
アカネ染め
タッサーシルクと極細綿の強撚糸
150番手の手紡ぎ綿糸を紡ぐ際に、極端に糸をかせから外すと、縮んでマリモのように強くねじりをかけて紡いでもらいました。 一本どり,または二本どりにして捻りをかけた丸くなります。その糸をタッサーを経糸として平織りにし、水通しすると、とても面白いしわの布が出来上がりました。