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谷中の丘のハハコグサ

ハハコグサ生まれ育った家や生まれて初めて触れた環境が、良く夢の中に出てくる。そんな夢は朝まで覚えていないのだが、日常のふとした瞬間に頭に浮かぶことがある。

谷中の天王寺東周辺の丘には、ハハコグサがたくさん生えている。この黄色い粟のような花を見ると4~5歳頃に良く遊んだ板橋双葉町の緑豊かな丘がよみがえる。小さな粒々の先っぽが面白くて、見ているうちにどうしても分解したくなった。綿毛の生えた葉っぱの方までそっとちぎっていくと、フワフワとしていて、母が綿入の半天作りに使っていた真綿のようにのびた。そんな幼児の時の感触や風景が今、この花を見た瞬間に鮮明に頭の中で見えてくるてくるのだ。

私の生家や、遊んだ路地、丘もすべて東京オリンピックの前、環状7号線の開通で影も形もなかった。あれはすべて、夢だったのだろうか。頭の中にだけある風景は、何が現実だったのか自信がない。谷中の丘のハハコグサは、遠い記憶が夢ではなかったことを証明してくれるようで、有り難い。